■ Pine Apple Rag (1908)/Scott
Joplin
|
ラスベガスが出てくるTVではバックによく流れます。やっぱりスティングの影響なのか、わかりやすく華やいだ雰囲気の人気のあるラグだと思います。 from 伊藤さん/掲載日 2003.01.27 |
■ Paragon Rag (1908)/Scott
Joplin
|
新間英雄氏は、スコット・ジョプリン Scott Joplin のラグで、Maple Leaf Rag(1899)以外の5大傑作を選んだことがあります。それは Elite Syncopations(1902)、Rose Leaf Rag(1907)、Gladiolus Rag(1907)、Fig Leaf Rag(1901)、そして Wall Street Rag(1909)でした。音楽的密度の濃さから言えば順当かも知れませんが、必ずしも有名ヒット曲に限らない選曲がマニアックだなあと思ったものでした。もちろん、みなさんも個人的好みでいろいろな曲を挙げられると思います。 私が一番最初にジョプリンの音楽に触れたのは、高校3年(1982)の時です。NHKの何かの番組で、ジョプリンの曲が紹介されたのを見て、レコードを探しました。しかし当時、1971年から始まったラグタイム・ブームはすでに凋落の傾向にあり、地元の小樽もそれほど大きいレコード店がないので、取り寄せになってしまいました。そうして手に入れたのが、LP『ピアニスティック・ラグ/James Levine』(1977-1982、RVC / RCA RCL-8339)でした。このレコードは、今も私の大切な宝物です。 レバインは、指揮者として有名な人ですが、そういうイメージに反してこのレコードは、実に楽しくスイングした演奏でした。理屈抜きで楽しめる音楽です。初めてのラグタイム体験がこのレコードで良かった、ラッキーだったと、後で身にしみることになります。そして、そのレコードの一番最初の曲が、このパラゴン・ラグだったのです。paragon とは英語で「模範」とか「逸品」などの意味を持ちますが、耳慣れない英語です。当時は「なんか怪獣みたいな名前だな」と思ったりしました(そりゃバラゴンだ)。とにかく、この曲は私が一番最初に接したジョプリン・ラグとして、特に思い入れのある曲です。 Richard Zimmerman などの研究家は、この曲を(珍しいパターンの第三楽節を除けば)比較的ジョプリンの初期の作風を持つととらえています。なるほど、メロディーの良さはもちろんですが、リフレインの多い単純な初期型の構成にも、親しみやすい要因があるのかも知れません。 それに比べて、第三楽節は、ジョプリンのラグタイム作品としては特別な工夫がされています。オルタネイト・ベースではなく和音のみの(モノトニック的)ベースが使われているのです。ブラスバンド風に、曲を盛り上げていく効果があります。この音型が、のちのオペラ Treemonisha(1911)のテーマ部分に出てくることを考えると、ジョプリンは早くからオーケストラ的な発想を曲に取り入れていたことがわかります。しかも、トリオ部分にのみそれを導入して、単純なラグに自然な変化を与えているのが、ジョプリンの天才的なセンスだと私は考えます。 私のディスコグラフィーは以下の通り。データベースからの打ち出しです。また、このディスコグラフィーには、ピアノ・ロールとMIDIを除いています。 P.ソロ CD:Scott Joplin -His Complete Works(4枚組)/Richard Zimmerman from 浜田隆史さん/掲載日 2005.05.05 |
■ Pastime Rag No.5 (1918)/Artie
Matthews
|
イリノイ州出身のアーティー・マシューズ Artie Matthews(1888-1959)は、一般のジャズファンには、彼のヒット作「Weary Blues」(1915)でその名が知られている程度でしょう。しかし彼は、あらゆる意味で異彩を放つラグ作曲家でした。その音楽的素養は、他のクラシック・ラグ作曲家とはまた違った、幅の広いものだったと考えられます。彼の代表作「パスタイム・ラグ」シリーズ全5曲をお聴きになれば、彼のラグが他とは違って、とてもモダンな響きを持っていることがわかるでしょう。 特に目立つのはタンゴとラグの融合で、この「第5番」はその代表例と言えます。この曲は、「パスタイム・ラグ」の中でも最も有名で、演奏例も多いのです。短調の第一楽節は、特に印象的で魅力あふれるパートですが、完全にタンゴです。しかし、その他の部分の陽気なラグタイムと絶妙なバランスで結びついています。パスタイムの中では比較的キャッチーなラグだったので、出版者のスタークは、これより先に出来ていた「第4番」をさしおいて、この「第5番」を「第3番」の次に出版してしまったというエピソードがあるくらいです。 彼の「パスタイム・ラグ」は、クラシックでいえば「奇想曲」と呼ぶべき奔放さがあり、代わりにケークウォーク的なシンコペーションはあまりとりいれていません。オルタネイト・ベースはじゃまなときには取り去り、気がついたらずーっとブレイクだったり、和声はクラスター(音の積み重ね)を導入したり、上品なふりをしてけっこうやりたい放題です。しかし、それが実験作では終わらず、新しいラグの可能性と洗練を示しているのがすばらしいです。この、音楽的にかなり自由な発想(新しいラグ、テラ・ベルデ的)を考えると、最初から彼は、ジョプリン以来のいわゆる「クラシック・ラグ」というものにそれほど執着がなかったのかも知れません。 なお、彼はアレンジの仕事もしていました。以下に、私が把握している彼のアレンジしたピアノ曲を記します。これがまた、ちょっと聴いただけですぐ「パスタイム」を思い浮かべるくらい個性的なんですよねー。
アーティー・マシューズは、のちにシンシナティーの教会のオルガン奏者となり、音楽学校を作ったそうですが、まだまだ彼の人生の詳しいことはわかっていません。彼のホームページ(リンクの Mary Haley's ragtime and related music home page から辿っていけます)によると、近いうちに彼についての本が出版されるそうですから、期待は大きいです。ちなみに、彼の息子の Art Matthews はジャズ・ピアニストです。 私のディスコグラフィーは以下の通り。データベースからの打ち出しです。また、このディスコグラフィーには、ピアノ・ロールとMIDIを除いています。 P.ソロ LP:The Collector's History Of Ragtime (5LP)/Richard Zimmerman from 浜田隆史さん/掲載日 2005.05.05 |
(C)2001- Japan Ragtime Club.
All Rights Reserved.