■ King Porter Stomp (1906)/Jelly
Roll Morton
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「オリジナル・ラグズ」の項でしか触れていなかったジェリー・ロール・モートン Jelly Roll Morton(1890-1941)のオリジナル曲は、やはりどうしても語らなければならないでしょう。他のあらゆるラグ作曲家とかなり異なる、ジャズやブルースを取りこんだ臭みある作風、バンド・リーダーとしての編曲能力が反映されたユニークなフレーズ構成、そして後世への影響力の大きさが、モートンを単なる一ラグ作曲家と捉えることを躊躇させるほどなのですが、彼のオリジナル・ラグはまぎれもなくラグ史上に残る名曲ぞろいです。 私がモートンの曲で最初に親しんだのは、ライ・クーダーの名盤「ジャズ」の中で取り上げられていた「The Pearls」(1919)でした。一度聞けば妙に心に残る、ブルースともラグともつかない、とても開放的な気分になる曲です。新間英雄氏によると(1987)、この曲を含め、彼の作品の中でだいたい十数曲(他の例で言えば
Frog-I-More Rag, Granpa's Spells など)に、三部形式のラグタイムの要素が強く感じられるといいます。 軽快なリズムの中に、いくつもクラシック・ラグの視点とは異なる要素が見て取れます。まずベースとなるリズムが三連符的で、よりスイング調のノリがあること。またリフレインでの変奏に大きな盛り上がりがあること。そしてクライマックスを導くリフでブルーノートが多用されていることなど。これらはすなわち、ジャズとの大きな共通点です。 私がこの曲を最初に聞いたのは、原曲のピアノ・ソロではなく、名ギタリストの Ton Van Bergeyk が編曲したバージョンでした(アルバム「Famous Ragtime Guitar Solos」)。彼の編曲も素晴らしいもので、妙に耳に残っていたのですが、その後手に入れた Butch Thompson のピアノ演奏を聞いて、私は完全にノックアウトされたのです。イントロから、「何か素晴らしいことが始まるんじゃないか」というトキメキが感じられて、モートンの曲の中でも特にお気に入りの一曲です。モートンのラグタイムにそれほど注目していない人は、特にクラシック系の演奏が好きな方に多いかも知れません(実は私も昔そうでした)が、一度はまれば、こんなに楽しい音楽もそうそうないかも知れませんよ。 P.ソロ CD:Piano Creole-Vol.3 1926-1939/Jelly Roll Morton from 浜田隆史さん/掲載日 2005.05.05 |
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